猫を飼い始めると気になるのが爪切り。
爪切りを嫌がる猫は多いので、なるべくスムーズに、失敗しないように行いたいですよね。
一度爪切りで嫌な思いをすると、二度と切らせてくれなくなる子もいます。
この記事では、猫の爪切り初心者のあなたに向けて、爪切りの基本から爪切りの時に大事なポイントをお伝えします。
なかなか猫の爪切りがうまくできないなと思うあなたも参考になることがあるかもしれないので、ぜひ読んでみてくださいね。
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猫の爪切りに関すること
最初に猫の爪切りを行う前のちょっとした疑問にお答えします。
そもそも猫に爪切りは必要なのか?
まず、そもそものところ猫に爪切りは必要なのでしょうか?
答えは・・・
本来は必要ありません。
その理由は、猫にとって爪は木に登る時、狩りをする時などに必要な道具だからです。
そして、犬などと違って猫は必要のない時は爪を引っ込めることができるからです。
ちなみに犬も外での運動量の多い子の場合は、地面で爪が削られていくので狼爪(ろうそう)以外はほとんど切る必要はありません。
※狼爪・・・いわゆる親指部分の爪で地面に接することがない爪です。
なんのために猫の爪切りをするの?
では、ペットとして室内で飼っている猫の場合はどうでしょうか?
爪を切らずに飼っている家庭もあるでしょうが、一度は爪切りのことを考えますよね。
猫の爪切りをする理由は、1つは爪が絨毯などの布類に引っかかって猫がケガをしてしまう可能性があるから。
もう1つは、猫の爪で人がケガをしてしまうから。
猫にひつかかれることで、痛い思いをするのはもちろん、その傷口から細菌が感染することもあります。
また、爪でひっかかれた時に猫に対して恐怖を感じたり、いら立ちを感じたりすることで、猫と友好な関係が築けなくなってしまうのも問題です。
さらに同居猫がいる場合は、猫同士がケンカした時のケガを予防できるのも理由の1つですね。
本来なら爪を切る必要はないです。
しかし、猫と人が同じ場所で良好な関係を築いて暮らしていくには爪切りが必要な場合があります。
爪とぎをしていれば爪切りは必要ない?
猫を初めて飼う人の中には、爪切り=爪とぎと思っている人がいるかもしれません(実際にそういう飼い主さんも多いです)。
猫が爪とぎをしていれば爪切りなんて必要ないんじゃないの?
答えはノーです(ただし、半分正解でもあります。)。
猫にとって爪は大切な道具で、それをメンテナンスするために必要なのが、爪とぎです。
猫の爪は層状になっており、最も外の古くなった層をはがすことで中から鋭くとがった層が出てきます。
爪を適切な長さで鋭く保つために爪とぎが必要なのです。
そのため、猫の爪の鋭い部分をカットする爪切りと、爪を鋭く保つための爪とぎでは全く意味が違ってきます。
つまり、鋭い爪をなんとかしたい!と思う場合は、爪切りが必要ということです。
《補足》
半分正解といったことに関してです。
猫が年をとってきて爪とぎなどの爪のメンテナンスをしなくなった場合、なにかしらの病気で爪とぎができない状況(例えば骨折、爪とぎをする余裕がないほど重篤な場合など)の時は爪切りをしてあげてください。
猫が健康な時は自分で爪とぎをすることで古い爪の層をはがし、爪の長さを一定に保つことができます。
しかし、老猫や病気の猫の場合は爪のメンテナンスができなくなることがあります。
こういう時は飼い主さんが定期的に猫ちゃんの爪の様子を確認してあげて下さいね。
猫の爪切りの方法
続いて、猫の爪切りに関して、爪の構造、爪を切る場所などをお伝えします。
猫の爪の構造と猫の爪の出し方
まずは猫の爪の構造を簡単に説明します。
猫の足を見てみると分かりますが、猫は犬と違ってふだんは爪が隠れています。
爪切りの際にはこの隠れた爪を出す手間が必要になるので、初めて爪を切る場合はちょっと難しく感じるかもしれません。
しかし、爪の構造と動きさえ理解していれば簡単なので安心してくださいね。
猫の爪の出し入れに重要なのは腱です。
この腱が後ろに引っ張られると爪が出る仕組みになっています。
爪切りの際はこの腱を伸ばすようなイメージで猫の指を押してあげるといいでしょう。
この時、わたしは猫の爪の上の皮膚を少しめくるような感じで押すようにしています。
よければ参考にしてみてくださいね。
猫の爪切りはどこまで切るのがベストか
では、猫の爪を出せたとして、次はどこまで切るのかをお伝えします。
まず、爪の根元の方の赤い(ピンク)ところは血管が走っています。
そのため、赤いところを切れば、もちろん出血しますし、猫も痛がります。
さらに、赤いところの境界ギリギリの付近も細かい血管が走っていることがあるので、ギリギリを切った場合も出血する可能性があります。
猫の爪切りに慣れていない方にお伝えしたいのは、爪の先端のとがっているところのみを切るようにして下さいということです。
最初からたくさん切ろうと考えず、確実に切っても大丈夫だと思えるところのみを切ってくださいね。
爪切りの道具|ハサミタイプ?ギロチンタイプ?人間用爪切り?
猫や犬の爪切り、いろいろ売っていますよね。
主な種類としては、ハサミタイプのものとギロチンタイプのものの2種類があります。
初めて爪切りをする場合、まだ爪切りに慣れていない場合は個人的にはハサミタイプの爪切りをおすすめします。
理由は、ハサミタイプの方が初心者には断然扱いやすいからです。
ギロチンタイプの爪切りは猫が暴れた時にギロチン部分に猫の爪が引っ掛かってしまったり、扱いが慣れていないせいで意図せず深爪になってしまうことも。
わたしも獣医になって最初の頃はギロチンタイプの爪切りがうまく扱えませんでした。
爪の先端のとがった部分のみを切るならハサミタイプの爪切りで十分ですよ。
ちなみに人間用の爪切りでも切れるには切れますが、うまく切れず爪がボロボロになることも。
先端をほんの少し切るくらいには使えるので、ペット用の爪切りがない場合は代用できます。
また、先端が細めのニッパーも爪切りとして使えます(特に子猫の場合。鳥やハムスター等の爪を切るのに適しています)。
ギロチンタイプ▼
ハサミタイプ▼
ニッパー(鳥の爪切り用として最適)▼
猫の爪切りで出血させた場合の対処法
爪切りの時のトラブルといえば、深爪をして爪の根元から出血することですね。
猫に限らず、犬、ウサギ、鳥などでときどき爪からの出血で動物病院を受診する飼い主さんがいます。
では、猫の爪切りの際に出血させてしまった時の自宅でできる対処法をお伝えします。
爪切り用のパウダー状の止血剤が市販で売っているので、それを出血しているところにすり込むように付けることです。
止血剤がない場合は、小麦粉やかたくり粉でも代用できます。
出血が止まるくらいまで付けておけば軽い出血の場合はよっぽど止まります。
もし、なかなか出血が止まらない、どうにも猫が爪を舐めてしまって出血が続いてしまう、出血の量が多くて止血剤ではどうにもならない時はすぐに動物病院へ行きましょう。
出血部位を布などで圧迫できるならした方がいいですが、猫も痛みで逃げたり怒ったりすると思うので、無理に何かするよりはそのままキャリーに入れて病院へ連れて行った方が早い場合もあります。
状況に応じて対応も違ってくるので、これに関しては猫の状態に応じてそれぞれ判断してもらうしかないです。
爪からの出血がある場合は動物病院へ連れていく際のキャリーは、汚れても洗いやすいという点でプラスチック製のキャリーが便利です。
こちらの記事も参考にキャリーを選んでみてくださいね。▼
ペットの爪切り用の止血剤▼
爪切りを嫌がる猫について
爪切りが嫌いな猫ちゃんって多いですよね。
自宅で爪切りができず、動物病院へ連れてくる飼い主さんはたくさんいます。
自宅での爪切りが無理なときは動物病院やトリミング施設にお願いするのも1つの方法ですね。
もし、自宅での爪切りをがんばってみようかなと思っている場合、次の2つのことをまず知っておいてもらえるといいでしょう。
猫は手(前足)をつかまれることや引っ張られることが嫌い
猫は手(前足)をつかまれることや引っ張られることが嫌いです。
がんばって爪切りをしようと意気込めば意気込むほど、猫の手をぎゅっとつかんでしまったり、ぎゅっと引っ張ってしまうことがあります。
爪を切られる時の振動を嫌がることも多いですが、それ以前に手をつかまれること、手を引っ張られることも嫌いということを理解しておきましょう。
2人で爪切りを行う場合は、1人が猫の肘や膝の関節を伸ばすようにして、猫が足を引っ込めにくいようにするのがポイントです。
前足の場合は脇に手を入れるとおさえやすいです。
動物の保定(動物をおさえること)のポイントは、基本的には関節をおさえる(伸ばす)ことなので、このことを頭の片隅に入れておくと爪切り以外の時にも役に立つかもしれません。
一度深爪などで嫌な思いをすると二度と切らせてくれなくなることも
そして、深爪をするなど痛い思い、嫌な思いをすると猫は二度と爪を切らせてくれなくなります。
嫌な思いをした後は、爪切りをしようとするとかなり抵抗することが多くなるでしょう。
猫に抵抗されて、引っかかれる、噛まれるなどされると今度は人の方も猫の爪切りが嫌なものになってしまいます。
とにかく最初は猫に嫌な思いをさせないように努めることが必要です。
その方法を次にお伝えしますね。
猫が爪切りを嫌いにならないようにする方法と注意点
猫が爪切りを嫌いにならないようにする方法(コツ)と、爪切りの注意点をお伝えします。
すでに爪切りが大嫌いな場合は、ちょっと難しい場合があるかもしれません。
また、とにかく焦らずに爪切りができるようになることを目指してくださいね。
爪切り道具を部屋の邪魔にならないところに置く
まず、嫌いになって欲しくないもの(今回は爪切り道具)は、自然と猫の目につくようなところに置いてみましょう。
ふだん見ることのない爪切り道具が突然現れて、それが現れると爪切りという嫌なことが起こる。
こんな風に猫が理解していると、もう爪切り道具を見ただけで警戒するはずです。
ペット用キャリーもそうなのですが、嫌いになって欲しくないものは、まずは猫にとって見慣れたものにしておくといいですよ。
ただし、猫と人にとって邪魔になるようなところ、猫や子どもなどがケガをしてしまう恐れがあるようなところには置かないようにしましょう。
参考インコのしつけ本を2冊紹介~行動分析学の基本も知れておもしろい~ - 睦月とら子のひとりごと
※この記事で紹介している『インコのしつけ教室』という本はインコに限らず動物の行動の意味を考える上で必要な知識がつまった本です。行動学の基本が分かりやすく書かれているので、動物のしつけや行動のことをもっと勉強したいという人におすすめですよ。
とにかく短時間でできるところまで
爪切りが大好き!という猫ちゃんは少ないです。
大抵の猫ちゃんは、爪切りは大嫌い、嫌い、どちらかというと嫌いと考えているのではないでしょうか。
嫌いなことが早く終わればそんなに気になりませんが、嫌いなことが長く続いた場合、わたしたちも嫌ですよね?ストレスを感じますよね?
猫も同じです。
とにかく短時間で終わるように心がけましょう。
それはなにも短時間でたくさんの爪(全部の爪)を切れるように訓練しろというわけではありません。
できるところまで切ったら、残りはまた別の日と、1回の爪切りの時間を短くすればいいだけです。
猫ちゃんによっても違うので具体的に何分くらいという目安はありませんが、ポイントとしては嫌がりそうな前にやめるようにしましょう。
嫌がりそうになる前にやめる
では、嫌がりそうになる前とはどのタイミングでしょうか。
常に嫌がる行動をする猫ちゃんもいるのでなかなか難しいのですが・・・、ここでは、「噛みつく」「ひっかく」という猫の攻撃行動の前にという意味で説明します。
爪切りの際に、噛みつかれたり、ひっかかれたりしたら嫌ですよね?
噛みつかれるからもう自宅では爪切りができないと動物病院に連れてくる飼い主さんも多いですよ。
じゃあ、噛みつく前に爪切りをやめる方がいい理由を説明します。
がんばって爪切りをして、猫ちゃんが噛みついてきました。噛みつかれて痛かったので、すぐに爪切りをやめた場合、猫ちゃんの考えはこうなります。
爪切りという嫌なことがあった時 ⇒ 人間の手を噛みついた ⇒ 爪切りをされなくなった
嫌なことをされた時、人間の手を噛みつくという行動をすると、嫌なことがなくなりました。
人を含め、動物はなにか行動をした後に、嬉しいことがあったり、嫌なことがなくなったりすると、その行動をくり返すようになります。
つまり、人間の手を噛みつけば爪切り(嫌なこと)がなくなるということを猫ちゃんは学習していくのです。
噛みつけば嫌なことが終わるので、猫ちゃんはどんどん噛みつくようになってしまいます。
そのため、噛みつく前にやめるのが重要です。
そして、噛みつく前に猫ちゃんは嫌がる動作を見せることが多いです(いきなり噛みつく子もいますが)。
例えば、体をくねくねさせて逃げようとする、しっぽをブンブンふる、シャーとかシューとかうぅ~など声を出すなどです。
怒りやストレスの限界がきて噛みついてくるので、とにかく短時間でできるところまででストップするのが一番のコツですね。
スキンシップやおやつを使って楽しい時間に
爪切りという嫌いなことを猫ちゃんが好きなこととセットにして、爪切りを楽しい時間にするのも1つの方法です。
なでられるのが好きな子はなでながらリラックス状態にして、おやつが好きな子はおやつを与えながら行いましょう。
ここでポイントなのは、爪切りが終わったらおやつを与える場合です。
爪切りが終わった後におやつを与えてうまくいっている場合はいいのですが、もしおやつを与えているのに爪切りがうまくいかない場合は、おやつの与え方を見直してみましょう。
見直すのは、おやつを与えるタイミングです。
犬などの動物のしつけでも同様なのですが、ごほうび(おやつ)を与えるタイミングがしつけをする上でかなり重要なんです。
ごほうびを与えるタイミングは数秒以内。
すぐ与えないと何に対してのごほうびなのか理解してくれないことがあります。
そのため、おやつを使っていてもうまくいかない場合は、おやつを与えながら爪切りを行う、または1本爪が切れたときにすぐにおやつを与えられる状態にしておくといいでしょう。
おやつを使う場合は、2人で行うのがいいですね。
1人が爪切り係、もう1人がおやつ係(猫ちゃんを抱っこしながらおやつを与える)。
おやつを食べることに集中しているときに爪切りが終わってしまえば猫ちゃんにとっても爪切りが楽しい時間になっていくかもしれないですよね。
寝ているときにサッと切る
もう1つの方法は猫ちゃんが寝ているときにサッと切ることです。
寝ている時、ハンモックから足が1本飛び出している時、ベッドで足を伸ばして寝ているときなどがチャンスですね。
寝ぼけている間に切ってしまえば、猫ちゃんも何が起こったのか分からないまま爪切りが完了します。
そして、この時もポイントは短時間で切れるところまでということです。
完全に起きるまで爪切りを続けるのはやめましょう。
1日1本とか2本とか、ちょっとずつ切っていくようにしましょうね。
巻き爪がひどい場合や爪や指に違和感を感じた場合は動物病院へ
基本的に若くて健康な猫の場合は巻き爪になったり、爪や指に異常が出ることはありません。
注意すべきなのは、高齢猫さん、爪や指になにか異常があり、猫がやたらとその指を舐める、触ると痛がる、その足を床につかないように浮かせている場合です。
また、指が腫れている、爪付近から膿のようなドロっとしたものが出ているなどもそうです。
まず、巻き爪の場合、巻いた爪が肉球にささってしまっている場合があります。
そこから細菌が感染してしまう恐れもあるので、特に初めて巻き爪を確認した場合は動物病院で処置をしてもらうのが無難です。
そして、爪や指に違和感を感じた場合も動物病院へ連れていきましょう。
細菌感染、炎症を起こしている場合もありますし、指が腫れているなどの場合は例えば指の骨が折れている、指の骨に腫瘍がある場合も(すごく稀な例ですが)。
爪や指に異常がある場合は、爪切りをしようとすると猫がふだんよりも嫌がる、痛がって怒る可能性もあるので、自宅で無理をして爪を切っても、猫にとっても人にとっても良いことはありません。
動物病院へサッと連れていけるように普段からペットキャリーに慣らしておくのも大事です。
▼こちらも参考にしてください▼
最後に~猫も人も爪切りタイムが嫌なものにならないように~
猫の爪切りに関するポイントをまとめました。
一番のポイントは、慣れないうちは何日かに分けてちょっとずつ切るようにすることです。
最初に無理をしなければ、だんだん爪切りに慣れていく可能性もあります。
猫も人も爪切りに慣れてくればまとめて一気に切れるようになるので、無理をしないことが大事です。
本当に無理な場合は動物病院で切ってもらうようにしましょうね。
では、最後まで読んで下さってありがとうございました。
猫も人も爪切りタイムが嫌なものにならないように気をつけていきましょう。
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